本年度ゴールデン・グローブ賞ベスト・オリジナル楽曲部門ノミネート作品。エイドリアン・ブロディ、ジェフリー・ライト、ビヨンセ・ノウルズ出演の映画『キャデラック・レコード 音楽でアメリカを変えた人々の物語』をパーソナリティー斉藤洋美が紹介。
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〈ストーリー〉
1940年代の終わり、シカゴの黒人街でクラブを経営していたレナード・チェス(エイドリアン・ブロディ)は、ギター1本でシカゴにやってきた南部の黒人マディ・ウォーターズ(ゲフリー・ライト)と若く衝動的なハーモニカ奏者リトル・ウォルター(コロンバス・ショート)二人でブルースバンドを結成させ、チェス・レコードを立ち上げる。
彼らのサウンドはR&Bのチャートをのぼり、更にチャック・ベリー(モス・デフ)やエタ・ジェイムズ(ビヨンセ・ノウルズ)らを発掘し、多くの音楽を生みだし時代を動かしていった・・・。
〈Hiromi’s Eye〉
音楽がなかったら・・・人生は想像に絶するほど、本当に悲惨なものになっていると思います。悲しい時、辛い時、そして勿論、幸せな時も、音楽がいつもそばにあるのでは・・・。
そして、音楽は言葉や人種を越え、人間や国を動かすことがあるんですよね。
その音楽の持つ計り知れない力は、いったいなんなのでしょう・・・。
それぞれの音楽に込められている魂・・・、その音楽が誕生した時代や人々の歴史や思いも込められているからかもしれません。
2009年1月20日。オバマ大統領が就任した夜に開催された祝賀会で、熱狂的な歓声が飛び交う観客の前で、バラク&ミッシェル夫妻が披露するダンスは、ビヨンセが生で熱唱するエタ・ジェイムズの名曲「At Last」で始まり、誰もが感動しました。
このアフロアメリカンの血を引く大統領が誕生した夜、歌われたこの名曲にも、色々な思いが込められているからこそ、より、感動を呼び起こしたのではないでしょうか。
この映画の中では、まさしくそのエタ・ジェイムスにビヨンセが扮し、映画の中でも名曲「At Last」を熱唱しているんです。
それはもう、鳥肌もので、感動でした。
この映画を通して、その名曲「At Last」誕生の秘話、そしてエタ・ジェイムスの悲惨な人生を知ると、よりこの祝賀会でビヨンセが熱唱した「At Last」が心に染みいるのでは・・・。
なぜなら、そのエタ・ジェイムスが発掘されたのが、オバマ大統領が政治家としてキャリアをスタートさせたシカゴのサウスサイドで誕生したチェス・レコードなんです。
そんないろいろなことが、現在のアメリカとリンクしつつ、そうなんだ~!
と感動せずにはいられませんでした。
そして何よりチェスは、人種差別が厳しかった時代に、白人といえども人種に対する偏見がなかったのが素晴らしい!
黒人の黒人による黒人のための音楽ではなく、白人社会にクロスオーバーしていくブルースからロックンロールに至る、音楽にまつわるストーリー、人々の情熱、悲惨さを知ることによって、今まで聴いてきた音楽が違って聞こえてくるようです。
プレスリーも、ビーチ・ボーイズも、ローリング・ストーンズも影響されたこのチェス・レコードから生まれた音楽。
今誕生する音楽にもこの音楽のルーツが魂が流れているはず・・・。
だから音楽は素晴らしい・・・と教えてもらえる作品です。
〈みどころ〉
- なんと言っても、ビヨンセです。
ビヨンセに、人生そのものが悲劇と言えるエタ・ジェイムズの悲しみ、切なさがみなぎっていて、スクリーンにビヨンセが登場するだけで、ゾクゾクしてきました。
「At Last」を歌い上げるシーンだけでも観る価値ありです。 - 当時のレコーディング風景を楽しめます。
〈お気に入り〉
- もちろん、ビヨンセです。
- ローリング・ストーンズがチラリと登場します。
原題:Cadillac Records
監督:ダーネル・マーティン
脚本:ダーネル・マーティン
出演:エイドリアン・ブロディ、ジェフリー・ライト、ビヨンセ・ノウルズ、コロンバス・ショート、モス・デフ、エマニュエル・シュリーキー、セドリック・ジ・エンタテイナー、ガブリエル
音楽:テレンス・ブランチャード
製作年:2008年
製作国:アメリカ
日本公開:2009年8月15日
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
上映時間:108分
第66回 ゴールデングローブ賞(2009)
- ベスト・オリジナル楽曲部門ノミネート
▼予告編